いたずらっ子な紳士、ポール・ウォーカー

引き続き、イギリスのタブロイド紙「Mirror」のサイトに掲載された、Lauren Franklinの、ポール・ウォーカーに関するコラムについて。

 

www.mirror.co.uk

 ポール・ウォーカーについて殆ど何も知らない著者が、ダビドフのフレグランスのイベントでポール本人に会い、途端に恋に落ちてしまったところまで、前回お話しました。

さて、いよいよ出席したゲストたちがそれぞれポールと写真を撮る、というフォトセッションが始まると、著者のLaurenはパニックに陥ります。これまで何人かの大物スター(トム・クルーズやウィル・スミスなど)にインタビューしたときでも、冷静さを失わなかった彼女ですが、いざポールが近寄ってきて、腕を彼女の肩にまわしてくると、彼女のアタマはフリーズ状態に。ポールの瞳や笑顔すべてが、彼女を思考停止状態にしてしまいます。

「How are you doing?」と話しかけられても、一言も言葉が出ません。ついには、「You good?」(大丈夫?)と尋ねられ、そこで著者の口から出てきた言葉が…。 

"Um, well I’m fine thanks Paul. But I definitely wouldn’t have gone at the salmon canapés as much as I did if I’d known I’d be standing this closely to you."

(うん、大丈夫、ありがとう、ポール。でも、こんなにあなたの近くに立つって知ってたら、サーモンカナッペをあれほど食べなかったのに)

ようは、沢山食べたサーモンマリネのせいで口臭が気になるということなのですが、著者は自分の言ったことに恥ずかしくなり、さらに心拍数は上がって顔も真っ赤になってしまいます。そんな著者に、ポールは…。
Oh god, what’s this? Paul Walker is laughing. But he’s not laughing at me, he’s laughing… with me?
"Haha, I’m glad I’m not the only one, I was trying to get someone to give me some chewing gum before I came out and had to breathe near all of you! Although the salmon is the least of my problems, I decided to wear a grey shirt and now can’t take my jacket off as the sweat patches I’ve got going on are insane. It’s so hot in here!"
( どういうこと?ポール・ウォーカーが笑ってる。私を、じゃなくて…私と?
「はは!オレだけじゃなくてよかったよ。こうやって君たちの近くに出てくる前に、誰かにガムを頼もうとしてたんだ。サーモンはまだよくてさ、グレーのシャツに決めたのはいいけど、汗ジミが大変なことになってて、ジャケットを脱げないんだよ。ここ、暑すぎだよな!」
 
…どうですか!紳士ですよね〜。
イギリス的ではなく、なんというか、アメリカ西海岸的に。
著者は、このポールのフォローにもうメロメロで、「結婚して‼︎」と、脳内プロポーズをしてるくらいです(笑)
 
こうして、写真撮影は無事終わり、著者とポール・ウォーカーとの短い逢瀬は幕を閉じます。
前回にも書きましたが、私はこのコラムが大好きです。このコラムは、ポールの事故の直後に掲載された追悼記事なのですが、著者の個人的な思い出話以外、何の情報もありません。著者は、エンターテインメント記事を書くライターなのにもかかわらず。
私がポール・ウォーカーの人柄に興味をもったのは、ジェームズ・ワン監督がインタビューで、ポールは本当に「いいヤツ」だ、と言っていたからなのです。でも、どう「いいヤツ」なのかを知りたくてポール・ウォーカーについて検索しても、リストアップされる記事といえば、どれも事故の詳細、残されたひとり娘、死を悼むスターたち、ポールが携わっていた慈善活動、そのような情報が似たようなトーンで書かれているものばかりでした。どれだけ記事を読んでも、まるで銅像みたいなポールのイメージしか湧いてきません。
そんななか、このコラムを読んだとき、ポール・ウォーカーという人の息づかいが、初めて聞こえたような、大げさですが、そんな気持ちになったのです。(息ネタですしね)
 
私の感想はともかく、このシンプルなコラムはポール・ウォーカーの人となりを、意外にも的確に伝えてくれているのではないでしょうか。この考えを裏付けてくれるような、ジャスティン・リン監督が「TIMES」に語った、ポールとの思い出話です。
During the press tour for Fast & Furious, we were outside a club in Moscow during a dreadful winter. Paul and I decided to do jumping jacks to keep warm. That’s the thing with Paul — he would never let his friend go do some goofy move alone. He was always there, no matter what. It wasn’t long before everyone joined us outside the club, doing jumping jacks in the snow.
(「ワイルド・スピード」のプレス・ツアー中に、極寒のモスクワで、僕たちがとあるクラブの外にいたときのこと。ポールと僕は体を暖めるために、手足を広げて飛び跳ねることにしたんだ。これが…ポールなんだよ。彼は、バカなことを、決して人にひとりではさせなかった。必ず一緒にやるんだよ、それが何であろうとね。
クラブの外で雪のなか飛び跳ねてる僕たちに、ほかの皆があっという間に加わったよ)
 
 
今回、この文章を書くのにLauren Franklinのコラムを読んで、またポールに恋してしまいました。
彼女の肩を抱いたポールの手、彼女へのまなざし、そしていたずらっ子の気遣いは、永遠に彼女だけのもの。…羨ましい。